アメリカン・ドキュメンタリーの金字塔
ダイレクトシネマの旗手―メイズルス兄弟のマスターピースがついに劇場公開!
ミッドセンチュリーの倦怠感を鮮烈に映した、
アメリカン・ドキュメンタリーの金字塔!
1960年代終わりのアメリカ。ポール・ブレナン(通称アナグマ)とその仲間たちは、金色に輝く豪華版「聖書」(現在の物価にして約350ドル)を売るミッドアメリカン・バイブル・カンパニーのセールスマンだ。神と会社のため、今日も聖書を売り歩く。教会から紹介された悩める大衆をターゲットに訪問販売の旅へと繰り出す。孤独な未亡人、移民、生活が逼迫している家庭など、彼らは、さまざまな客に「売り込み」をする。ジョークを交えた おしゃベり、おだてたり強くでたりの駆け引き。安モーテル、煙いダイナー、郊外のリビング…。雪深いボストンから湿度の高いフロリダまで旅をする4人のセールスマンの姿を追い、アメリカの夢と幻滅を鮮烈に描きだす。
ドキュメンタリー映画の潮流“ダイレクトシネマ”を牽引した兄弟アルバート&デヴィッド・メイズルスは、『グレイ・ガーデンズ』『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター』など数多くの名作を残し、映画史にその名を刻んだ。アルバートは撮影監督としてオムニバス映画『パリところどころ』のジャン=リュック・ゴダール監督篇に参加。ゴダールは彼を「アメリカ最高のカメラマン」と評した。そんなメイズルス兄弟の代表作である本作は、独自の観察スタイルでノンフィクションの世界に革命を起こした。アメリカの価値観に深く根ざした消費主義について映画史上最も深く洞察した画期的なドキュメンタリーが、製作から半世紀以上の時を経て、ついに日本にやってくる!
メイズルス兄弟
東欧からのユダヤ系移民の親のもと、ボストンで生まれたアルバートは、シラキュース大学で学士号を、ボストン大学で修士号を取得し、3年間心理学の教鞭をとった。1955年の夏、16mmカメラを持ってロシアに行き、いくつかの精神病院で患者を撮影し、心理学から映画への転換を図った。その成果である『Psychiatry in Russia』は、アルバートにとって初めての映画制作の現場となった。数年後、弟のデヴィッドと共にミュンヘンからモスクワまでオートバイで移動し、その途中でポーランドの学生革命をテーマにした初の共同作品を撮影した。
1960年、アルバートは、ケネディとハンフリーの民主党予備選挙キャンペーンを描いた『プライマリー』(ロバート・ドリュー監督作品)の撮影監督を務めた。手持ちカメラとシンクロサウンドを使い、ストーリーを自ら語ることができるようにした。その後、兄弟で『Meet Marlon Brando(マーロン・ブランドに会う)』(66)、『A Visit With Truman Capote(トルーマン・カポーティ訪問)』(66)を製作。そして、本作『セールスマン』(69)を発表。全米映画批評家協会賞を受賞し、アメリカン・ドキュメンタリーの代表作と評される。1987年に弟のデヴィッドが死去。アルバートはその後も単独でドキュメンタリー映画を撮り続け、監督・撮影を務めた『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』(14)は2016年に日本でも劇場公開された。2015年に死去。彼らは30本以上の映画を制作し、その多くは、芸術、アーティスト、ミュージシャンに焦点を当てたものだった。アルバートは2013年国家芸術勲章を受章、また『Soldiers of Music』(91)でプライムタイム・エミーを受賞。デヴィッドは『Vladimir Horowitz』(85)でプライムタイム・エミーを受賞。
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