負け犬として生まれ、勝つために生きた、ロックンロールの化身、極悪暴走御大レミーが南米で轟音をかき鳴らす。人類史上最高の暴走バンド、2011年チリでのオフィシャル・ライヴ映像。
40年間にわたり前人未踏の大暴走を展開したイギリスのバンド、モーターヘッドのフロントマンであるVo./B.レミー・キルミスターが2015年12月28日に伝説となってから今年で7年。今年もレミーの誕生日(12/24)、そして命日(12/28)を含む日程でのモーターヘッド関連作品の上映が決定した。
今年の公開作は2011年のワールドツアーで行われた、南米チリ、サンティアゴでの暴走ロックンロールショウの模様を収録したライヴ作品『モーターヘッド/ザ・ワールド・イズ・アワーズ』だ。今回もまた、正確な情報はないが、本作は海外では商品化されているが劇場公開された形跡はなく、映画館という環境で上映されるのは非常に珍しいことといえる。
核爆弾が落ちてもゴキブリとともに生き残るといわれ、2,000人もの女性と夜を共にし、1956年にはロックンロール誕生の瞬間を目撃、マルボロとジャックダニエルにまみれて血液が猛毒化、ビートルズを愛し、世界最大音量のバンド《モーターヘッド》を40年間続け、1945年クリスマスイブである12月24日に負け犬として生まれて以来、常に勝つために生き、不眠不休の大暴走を続けた人間とは思えない豪傑、ロックンロールの化身レミー・キルミスターがこの世を去ったのは2015年。70歳の誕生日を迎えてから4日後、癌を宣告されてからわずか2日後のことだった。そして翌日、メンバーからモーターヘッドの活動終了が伝えられた。
1975年の結成以来、メインストリームとは真逆のロックの裏街道を驀進したモーターヘッドは、ヘヴィ・メタルとパンク/ハードコアという普段相容れない両ジャンルからも熱い支持を集め、その両者が一触即発の状態に陥った場合でもモーターヘッドの曲を流せばすべてがおさまるという、この世に類を見ない存在感を誇ったバンドだ。
レミーの死の約4年前のライヴである本作は、『メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー』(06年)、『グローバル・メタル』(08年)を手掛けたBANGER FILMSが制作。監督、撮影、プロデューサー等のスタッフはこのチームが担当、音楽のMIXは2004年のアルバム「Inferno」以降、2015年のラスト・アルバム「Bad Magic」まで、モーターヘッドのアルバムを計6枚プロデュース、バンドが最も信頼し、モーターヘッドの音を最も知り尽くしたキャメロン・ウェブが担当している。
いつ、どこで、どんなライヴをこなしても何も変わらないモーターヘッドという地球の切り札の底力がスクリーンを通して伝わって来る恐るべき作品であり、いつもとまったく同じライヴ。
鑑賞後数日間は耳が聞こえづらくなることを覚悟しなければならない。
©︎2011 UDR