無様でも、もがいても、君はかっこいい。
西加奈子の傑作短編小説を ふくだももこ監督が、
うらじぬの × ファーストサマーウイカで映画化。
何度も現実に絶望する二人の女性が
世にも奇っ怪な「炎上する男」を 探すシスターフッドムービー。
短編『父の結婚』(2015)を脚本・監督した後、『おいしい家族』(2019)、『君が世界のはじまり』(2020)、『ずっと独身でいるつもり?』(2021)とコンスタントに作品を発表し、2016年には小説『えん』で第40回すばる文学賞を受賞するなど、多彩な才能を発揮するふくだももこ監督。そんな彼女が、「世界中でわたしが一番撮りたいと思っている」と言い切ったのが、一度見たら忘れられない個性的な風貌と確かな演技力で映画やドラマにも多数出演する俳優・うらじぬの。 そして、ふくだ監督が「うらじぬのが最も魅力的に映る物語」として選んだのが、監督が敬愛してやまない作家・西加奈子が2010年に上梓した短編小説『炎上する君』である。
原作小説で描かれた「主人公の梨田と浜中。ルッキズムに傷つく二人の親友同士が、足元が燃えている男の噂を聞きつけ探し始める」という骨格はそのままに、ふくだ監督はキャラクターの背景やストーリーを大胆に改変。映画では、女性への抑圧に日々絶望しながらも自由と解放を追い求める梨田と浜中が、無自覚な差別や偏見、ラベリングに傷つく人たちを救っていく姿を通して、新しい連帯の形を提示。本作『炎上する君』は、原作小説の強烈な個性と先進性を伝えるとともに、多様な人々の「いま」を切り取ったシスターフッドムービーとなった。
高円寺の高架下。アップテンポなダンスチューンに合わせ、おもむろに脇毛を見せながら踊り狂う二人の女性・梨田と浜中。彼女たちは唯一無二の親友である。
高円寺の銭湯「なみのゆ」。梨田と浜中は湯に浸かりながら「50代の男性と14歳の少女の真剣な恋愛」や「政治家の女性蔑視発言」、「医学部での女性受験者の一律減点」など、炎上が相次ぐ女性への抑圧に日々憤っていた。
ある日、浜中とお笑いライブに出かけた梨田。場内が爆笑に包まれる中、容姿や恋愛経験を揶揄されるお笑い芸人の傷ついた表情を、梨田は見逃さなかった。その帰り道、全身脱毛の告知が書かれたポケットティッシュを手にした梨田はふと思う。「なぜ彼は見た目を変えなければならないのだろう。恋人がいないことがそんなにダメなことなのだろうか。そしてなぜ私は体中の毛を無くさなければならないのだろう」。その日を境に、梨田と浜中は脇毛をたくわえ、ダンスをすることで自分たちを解放するようになる。誰のためでもない自分のために脇毛を生やし、晒す二人。
商店街でのダンスイベントの帰り、梨田と浜中は居酒屋でバンドの打ち上げに遭遇する。メンバーからの無自覚なラベリングに傷つき、店を飛び出した女性トモに、梨田は思わずこう叫ぶのだった。
「君はなにも悪くない」と。
そんな折、浜中が高円寺周辺ばかりに出没する「炎上する男」の噂を聞きつけてきた。噂はどうやら真実味を帯びており、二人は一度でも男を目にしたいと好奇心を頼りに探し回る。ぼうぼうと足が燃える男。その男は、一体何者なのだろうか―――。
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